いまや、国民の一割以上が患い、国民病とも言われる花粉症。毎年、春先には全国的な社会問題になります。 |
鹿児島県では、スギ花粉症が最も深刻な関東地域に比較すると、それほど深刻ではないものの、スギのみならずヒノキ、イネ科の花粉症の患者さんも増加傾向にあります。 |
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花粉症とは何ですか? |
スギなどの花粉で誘発される季節性のアレルギー性鼻炎、結膜炎のことです。花粉が、眼、鼻、のどの粘膜に付着することにより、体がアレルギー反応をおこし、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみ、などの症状をひきおこします。重症な方は、頭痛、咽頭痛、発熱など風邪の症状までひきおこし、日常業務、学業に深刻な影響をおよぼします。 |
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スギ花粉の症のシーズンはいつですか? |
鹿児島県では、スギ花粉は、通常2月初旬に飛び始め、2月後半から、3月初旬に飛散のピークを迎えます。また、鹿児島県はヒノキ花粉の飛散(3月〜4月)も多いのが特徴です。スギ花粉症の方は、しだいにヒノキにも過敏になり、4月下旬くらいまで、症状が続くことがあります。 |
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突然なったのですか? |
花粉症を理解する上で、3つのキーワードがあります。「アトピー体質」「感作」、そして「発症」です。遺伝的にアトピー体質の人が、ある短期間花粉を吸入(暴露)しますと、血液中のリンパ球がIL-4というサイトカイン(サイトカインとは、細胞が産生する蛋白でで、細胞の増殖・分化・機能発現を行うものです)を過剰産生するようになります。この反応の時期を感作といいます。この感作期間中は、症状はありません。無症候性花粉症と言えるでしょう。一定の感作期間の後に、リンパ球がIL-5という別のサイトカインを過剰産生するようになります。そして、花粉症のシーズンになり、花粉を吸入(暴露)すると、花粉症を発症します。突然発症するようですが、アトピー体質の人が感作という症状のない期間を必ず経て発症します。 |
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自然に治るものですか? |
アトピー体質が関係しますので、残念ながら、一度発症すると、自然治癒は期待できません。むしろ、スギ花粉症の人はヒノキや、ブタクサ、イネ科の花粉にも反応しやすくなります。 |
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どんな治療法がありますか? |
花粉症のシーズン中は、抗ヒスタミン剤の服用、点眼液、ステロイド点鼻液などで症状を和らげる治療法が一般的です。毎年、花粉症に悩まされている方には、初期治療をお勧めします。 |
鹿児島では、例年、2月の第1週が、飛散開始日ですので、1月下旬ごろより、眠気の少ない抗ヒスタミン剤を服用開始し、シーズン中の症状緩和を期待します。根本治癒には、免疫療法(減感作療法)があります。スギ花粉の抗原エキスを少しずつ注射し、アレルギー反応をおこしにくい体質に変えていく治療法です。花粉症シーズンの半年程前から、週1回、スギ花粉の抗原エキスの注射を開始し、次第に濃度をあげていき、月1回の維持量の注射をめざします。注射を開始した最初のシーズンから有効ですが、完全治癒には5年程かかり、まれに重大な副作用が起こる可能性があるのが欠点です。耳鼻咽喉科専門医に相談し、症状の強さや、生活様式にに合わせた治療法を選択されるのが望ましいと思われます。 |
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予防方法はありますか? |
シーズン中、スギ花粉の飛ばない奄美などに避難(避粉)できればいいのですが、そういうわけにもいきませんので、花粉情報を参考に花粉飛散が多いときは、花粉を吸い込まない、家の中に持ち込まない、ことが重要です。花粉症シーズンともなれば、薬局などにマスク、花粉症対策メガネなど、さまざまな花粉症グッズが並びます。もちろん、ストレス、お酒、タバコ、睡眠不足は確実に花粉症を誘発、悪化させます。朝ごはんを美味しくいただけるような規則正しい生活を心がけることが何よりも重要です。 |
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アレルゲンを避ける工夫 |
室内ダニの除去 |
@ 室内の掃除には排気循環式の掃除機を用いる。 |
A 織物のソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。 |
B ペットのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。 |
C 部屋の湿度を50%、室温を20〜25℃に保つように努力する。 |
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ペット(特にネコ)抗菌の減菌 |
@ できれば飼育を止める。 |
A 野外で飼い、寝室に入れない。 |
B ペットと、ペットの飼育環境を清潔に保つ。 |
C 床のカーペットをやめ、フローリングにする。 |
D 通気をよくし、掃除を励行する。 |
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スギ花粉の回避 |
@ 花粉情報に注意する。 |
A 飛散の多い時の外出を控える。 |
B 飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。 |
C 飛散の多い時は外出時にマスク、メガネを使う。 |
D 表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。 |
E 帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。 |
F 掃除を励行する。 |
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LEAP診察室vol.21 掲載 |