コラム 上野院長 執筆記事

年末感想 ウイルスと遺伝子の「光と影」

ウイルスと遺伝子の「光と影」

本年度から、森山一郎先生の後任として鹿児島県耳鼻咽喉科医会長とともに鹿児島市耳鼻咽喉科医会長を拝命しました上野員義です。どうぞ、よろしくお願いいたします。県医会長としての県医師会報12月号の年末回顧と内容一部重複することをお許しください。

さて、多くの耳鼻咽喉科医とりわけ開業医にとりまして、コロナ禍の今年ほど、心理的にも経済的にも過酷な年は無かったように思われます。「密」、「飛沫」、「エアロゾル」、「濃厚接触」等のコロナ・キーワードが我々を襲ってまいりました。私どもは小児耳鼻咽喉科医でもあり、時に託児所並みの「密」診療。face to faceの「濃厚接触」、「飛沫」を浴びやすい診察環境。「エアロゾル」もネブライザー療法として耳鼻咽喉科治療の重要な一翼です。政府、マスコミのこれらコロナ・キーワード回避の啓蒙活動で、患者さんが警戒し受診抑制するのも当然です。結果として、耳鼻科の医業収入の減少は惨憺たるもので、日医の調査でも4−6月前年同月比マイナス34.5%と、開業以来の減収と言われる先生方も多くおられます。

しかし、耳鼻科医は、コロナ禍以前より、いわゆる標準感染予防策はかなり徹底されており、また多くの施設でネブライザー装置には排気用換気扇を併設しています。そして、このコロナ禍で更なる感染予防策を徹底し、幸い全国的にも耳鼻科診療に伴うコロナ感染は報告されていません。現在コロナとインフルエンザのツインデミックが危惧されていますが、本来感染防御策に習熟している耳鼻科医は、必ずや克服できるものと信じております。

そうした感染拡大が危惧される中、会員の先生方においては、地域の感染状況を把握しながら、感染対策を施しタイムリーに学校検診を遂行していただきました。学校側も可及的に「密」を避ける努力、器具の滅菌対策に協力いただきました。幸い、検診等で学童及び学校医に感染例の報告がないことに安堵しております。

小児、学童に感染例、クラスター発生が極めて少ないことや、日本を含めた東アジアに重症例、死亡例が少ないことが分かってきました。コロナウイルスの宿主側レセプターACE2の加齢に伴う発現や、世界的地域差、人種差に研究者が注目しています。

その中で、コロナ感染に伴う重症化に古代人ネアンデルタール人の遺伝子が関与しているらしいというnature論文(ペーボ教授、マックス・プランク進化人類学研究所)が話題になっています。ヨーロッパ、インドなどの南アジアの人々比べ、東アジア人に重症例が極めて少ないことの一つの根拠として注目されています。ホモ・サピエンスは唯一生き延びた人類種で、バルカン半島に先住していたネアンデルタール人を絶滅させる中で交雑(交配)し、中東とヨーロッパの現代人に特有のDNAのうち、1〜4%がネアンデルタール人のDNAが組み込まれたとする、サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ著)の書き出し「唯一生き延びた人類種を」興味深く思い出しました。一方この遺伝子は、肝炎ウイルスには抵抗性を持たせるといわれ、ヨーロッパ人に比べ、東アジア人に肝炎が多いことと合致します。まさに、古代人ネアンデルタール人の遺伝子の「光と影」です。

危機はみな、好機でもある(同じくハラリ著 パンデミック緊急提言より)。一瞬のうちに、Zoom会議、Webセミナーが普及しました。延期されていた岡山での日耳鼻総会も、この秋のWeb開催と現地開催の二本立てで成功を博しています。オンデマンドで、専門医更新のための単位が院長室や自宅書斎にいながら獲得できる快感は格別です。反面、従来の講演は、すごく大事な儀式でもあったと気づかされました。今春主任教授として新たに着任された山下 勝教授の講演を、医会主催で10月3日に城山ホテルにて感染対策を施して開催できました。日常の束縛から解放され、多くの出席者があり、演劇でいうところの「感情の一体感」を感じつつ山下教授のお人柄を窺いながら、講演「鼻科学手術の進歩」を興味深く拝聴した次第です。

コロナ禍でレベルアップした感染対策、リモートを活用した診療、学会活動の流れは、後戻りせず、ますます発展していくと思われます。ある攻撃的論調で知られるビジネス誌が、「コロナ禍で開業医の凋落」といった我々の不安をあおる記事を掲載しておりました。ウイルスと社会不安が我々の人間性を試しているものと思います。ウイルスがあぶりだした「光と影」を冷静に見極めながら「不易流行」を旨に対応していきたいものです。
 

鹿児島県耳鼻咽喉科医会長 上野員義
鹿児島市医師会報 令和2年11月20日発行

花粉症

花粉症

私たちの体はウイルス、ばい菌などの外敵が入ると、やっつけようとする免疫システムを備えています。スギ花粉は毒を出すわけでなく、増殖することもないのでほっとけばいいものを、体が「敵だ」と過剰に反応した状態が花粉症です。鼻水や涙で洗い流そうとし、それでも花粉がどんどん侵入してこようとするため、くしゃみが連発したり、吸い込まないように鼻が詰まったりするのです。

なぜ花粉症が増えてきたかというと、身の回りの環境が清潔になり過ぎたため、免疫システムが力を持て余し、取るに足らない花粉まで過剰に反応するようになったとする説が有力です。

花粉症を起こすのはスギだけではありません。日本はスギの植林地が多く、スギ花粉症を発症しやすいのです。スギ以外では5月の連休までヒノキの花粉が飛び、5〜6月に牧草やハルガヤなどのイネ科植物、秋にはブタクサ、ヨモギなどのキク科雑草の花粉にも反応する人が増えています。アトピー体質などで敏感な人はほぼ一年中、発症する危険性があります。
 
これらの植物は、ミツバチなどの虫の力を借りて受粉する種類(バラやチューリップ)ではなく、風の力で花粉を飛ばして受粉する種類が多いのが特徴です。特にスギ花粉は小さくて軽いため遠くまで飛び、都市部の人々にも花粉症を発症させます。
花粉症の予防は、花粉を「吸わない」「家の中に持ち込まない」が最も大事で、マスクや眼鏡が役立ちます。症状を和らげる良い薬も開発されています。スギ花粉エキスを口に含み、スギ花粉に体を慣れさせる免疫治療も近いうちに実用化されます。
 

南日本新聞 平成25年4月28日掲載

良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症

めまいの症状を訴える人に最も多い病気で、なでしこジャパンの澤穂希選手やタレントのカンニング竹山さんがかかったことで知られるようになりました。
原因と症状は?
更年期や骨粗鬆症との関連性が指摘されており、中高年の女性に多く見られますが、最近は若い人にも増えてきました。 原因は、内耳にある小さな石「耳石」がはがれて体の平衡感覚や回転運動を感知する三半規管に落ち込み、リンパ液の動きが乱れて脳に間違った情報が伝わることです。 症状は、寝返りをうったり、靴を履こうとして前かがみになったり、洗濯物を干そうと見上げたりしたときに天井が回って見えるなど、回転性のめまいが長いときで1分ほど続きます。耳鳴りや難聴を伴うメニエール病とは異なります。
 
予防と治療は?
予防は、横になってテレビを見ない、パソコンやスマートホンなどを長時間前かがみで使用しない、耳石が三半規管に落ち込みやすい低い枕を使わないことなどです。また、日頃から運動を心掛け、特に中高年の女性は骨粗鬆症の予防に努めることが大切です。 治療は、聴力検査や重心動揺計、赤外線カメラなどで検査してから、はがれ落ちた耳石を元の位置に戻してかくはん、吸収させる運動療法を行うほか、自宅でできる「めまい体操」などの運動法が指導されます。
運動を継続すれば症状は次第に治まっていきますが、繰り返しやすい病気なので、症状が疑われる場合は必ず耳鼻咽喉科を受診しましょう。
 

tea time 平成25年9月掲載

メニエール病

メニエール病

メニエール病という病名は一般的によく知られていますが、「めまい=メニエール病」と誤解している人が多く見られます。めまいの症状があると「メニエール病ではないか」と耳鼻科を受診する人もいますが、メニエール病でないことがしばしばあります。
メニエール病の本態や原因については分かっていないことが多く、何らかの原因でバランスを崩した内耳リンパ液が水膨れ(内リンパ水腫)を起こして発症すると考えられています。誘因としてはストレスや不規則な生活、運動不足などが挙げられ、最近はきちょうめんな性格が原因となっているケースも多いことが注目されています。また疫学的調査から、発症するのは「周囲を気にして嫌なことを我慢し、他人に負けないよう努力する傾向が強い人」が多いといわれています。
3つの症状を繰り返す
メニエール病は厚生労働省指定の難病の一つで、天井などがぐるぐる回るように見える回転性のめまいが起きるのが最大の特徴です。また、必ず難聴(耳が詰まった感じになることもある)と耳鳴りを伴い、3つの症状を繰り返しながら聴力が少しずつ衰えていきます。さまざまな自律神経症状が現れ、血圧の変動や冷や汗、吐き気、嘔吐を伴うこともあります。
 
メニエール病とよく間違われる頭位めまいは、三半規管にある耳石器の障害が原因で起こる回転性めまいで、めまい患者の8割を占めます。寝返りや高い場所にある物を取ろうとした時などに誘発され、難聴や耳鳴りなどの症状は伴いません。また、めまいを感じてろれつが回らなかったり、意識障害や手足のまひ等を伴う場合は脳卒中なども考えられるので、救急車を呼ぶなどして一刻も早く専門医を受診するようにしましょう。
 
治療と予防
メニエール病の治療は、抗めまい剤や循環改善剤などの薬を服用して内耳の水膨れを治していきます。また、体内の水分バランスを整える漢方薬も有効です。
予防には規則正しい生活や適度な運動、ストレス解消などが大切です。
 

tea time 平成25年3月掲載

いびき [睡眠時無呼吸症候群]

いびき[睡眠時無呼吸症候群]

要注意!睡眠時無呼吸症候群の最大の原因は“肥満”
丸顔で、首が太く短く、それに肥満傾向の人は、ほぼ100%いびきをかきます。豪快さの象徴とされてきたいびきには、恐い『睡眠時無呼吸症候群』が潜んでいます。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に10秒以上の無呼吸が何度も起こり、血液中の酸素濃度が低下し充分な睡眠が確保されず、「寝起きが悪い」、「寝起きの頭痛」、「食後に急速に眠たくなる」、「会議中にふと寝てしまう」などといった症状が現れる全身病です。新幹線運転手の居眠り運転問題以降、社会問題化しています。また、高血圧、糖尿病などのあらゆる生活習慣病に直結することも解ってきています。
いびきや睡眠時無呼吸症候群は、「肥満」、「鼻づまり」、「扁桃(へんとう)肥大などでのどがせまい」などが原因になります。中でも、最大の原因が「肥満」です。首回り、舌に余分な脂肪が蓄積し、仰向けに寝ると重力で舌根が沈下し軌道を閉塞して睡眠時無呼吸症候群を発症します。肥満度の指標によくBMI(Body Mass Index)が使用されます。BMIは、22〜24が正常値です。25以上が肥満とされています。30以上の方は、睡眠時無呼吸症候群は必発です。
まず原因、程度を知ることが大切!症状が軽い場合はダイエットで改善。
睡眠時無呼吸症候群の程度の軽い方は、運動療法、食事療法によるダイエットで改善できます。ダイエットのコツは、いきなり標準体重をめざさず、まず5%(80kgの人なら4kg)減量を目標とすることです。
重症の睡眠時無呼吸症候群の方には、自宅でできるCPAP(シーパップ)療法をすすめています。これは、鼻マスクから気道に空気を送り込み、気道の閉塞を防いで、無呼吸を改善する治療法です。効果は、直後より現れます。実際、このCPAP療法で、熟睡感を取りもどし、昼間の活動性が向上しさらに、ダイエットにも成功して、高血圧まで治った方がいらっしゃいます。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎に伴う鼻茸などによる「鼻づまり」も、睡眠時無呼吸症候群の原因になります。また、CPAP療法の際、鼻マスクが苦しくて使えないということも発生します。そこで、内視鏡手術で鼻づまりを改善させる方法も有効です。
「扁桃肥大」によるいびきや睡眠時無呼吸症候群は、子供に多い病態ですが、時に成人の方にも見受けられます。扁桃摘手術に咽頭形成術を行うことで劇的に改善します。
いびきのひどい方、睡眠時無呼吸症候群かなと思われる方は、睡眠時無呼吸症候群を扱っている呼吸器科、耳鼻咽喉科にご相談下さい。まずは睡眠時無呼吸症候群の原因、程度を知ることが大切です。最近、自宅でできる簡易型の睡眠ポリグラフィー検査機器も開発され、手軽に検査ができるようになりました。医療側でも呼吸器科、耳鼻咽喉科、歯科などが横の連係を取りながら、個々の患者に応じた治療戦略を立てるようになってきています。

花粉症について

花粉症について

いまや、国民の一割以上が患い、国民病とも言われる花粉症。毎年、春先には全国的な社会問題になります。
鹿児島県では、スギ花粉症が最も深刻な関東地域に比較すると、それほど深刻ではないものの、スギのみならずヒノキ、イネ科の花粉症の患者さんも増加傾向にあります。
花粉症とは何ですか?
スギなどの花粉で誘発される季節性のアレルギー性鼻炎、結膜炎のことです。花粉が、眼、鼻、のどの粘膜に付着することにより、体がアレルギー反応をおこし、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみ、などの症状をひきおこします。重症な方は、頭痛、咽頭痛、発熱など風邪の症状までひきおこし、日常業務、学業に深刻な影響をおよぼします。

スギ花粉の症のシーズンはいつですか?
鹿児島県では、スギ花粉は、通常2月初旬に飛び始め、2月後半から、3月初旬に飛散のピークを迎えます。また、鹿児島県はヒノキ花粉の飛散(3月〜4月)も多いのが特徴です。スギ花粉症の方は、しだいにヒノキにも過敏になり、4月下旬くらいまで、症状が続くことがあります。
突然なったのですか?
花粉症を理解する上で、3つのキーワードがあります。「アトピー体質」「感作」、そして「発症」です。遺伝的にアトピー体質の人が、ある短期間花粉を吸入(暴露)しますと、血液中のリンパ球がIL-4というサイトカイン(サイトカインとは、細胞が産生する蛋白でで、細胞の増殖・分化・機能発現を行うものです)を過剰産生するようになります。この反応の時期を感作といいます。この感作期間中は、症状はありません。無症候性花粉症と言えるでしょう。一定の感作期間の後に、リンパ球がIL-5という別のサイトカインを過剰産生するようになります。そして、花粉症のシーズンになり、花粉を吸入(暴露)すると、花粉症を発症します。突然発症するようですが、アトピー体質の人が感作という症状のない期間を必ず経て発症します。
自然に治るものですか?
アトピー体質が関係しますので、残念ながら、一度発症すると、自然治癒は期待できません。むしろ、スギ花粉症の人はヒノキや、ブタクサ、イネ科の花粉にも反応しやすくなります。
どんな治療法がありますか?
花粉症のシーズン中は、抗ヒスタミン剤の服用、点眼液、ステロイド点鼻液などで症状を和らげる治療法が一般的です。毎年、花粉症に悩まされている方には、初期治療をお勧めします。
鹿児島では、例年、2月の第1週が、飛散開始日ですので、1月下旬ごろより、眠気の少ない抗ヒスタミン剤を服用開始し、シーズン中の症状緩和を期待します。根本治癒には、免疫療法(減感作療法)があります。スギ花粉の抗原エキスを少しずつ注射し、アレルギー反応をおこしにくい体質に変えていく治療法です。花粉症シーズンの半年程前から、週1回、スギ花粉の抗原エキスの注射を開始し、次第に濃度をあげていき、月1回の維持量の注射をめざします。注射を開始した最初のシーズンから有効ですが、完全治癒には5年程かかり、まれに重大な副作用が起こる可能性があるのが欠点です。耳鼻咽喉科専門医に相談し、症状の強さや、生活様式にに合わせた治療法を選択されるのが望ましいと思われます。
予防方法はありますか?
シーズン中、スギ花粉の飛ばない奄美などに避難(避粉)できればいいのですが、そういうわけにもいきませんので、花粉情報を参考に花粉飛散が多いときは、花粉を吸い込まない、家の中に持ち込まない、ことが重要です。花粉症シーズンともなれば、薬局などにマスク、花粉症対策メガネなど、さまざまな花粉症グッズが並びます。もちろん、ストレス、お酒、タバコ、睡眠不足は確実に花粉症を誘発、悪化させます。朝ごはんを美味しくいただけるような規則正しい生活を心がけることが何よりも重要です。
アレルゲンを避ける工夫
室内ダニの除去
@ 室内の掃除には排気循環式の掃除機を用いる。
A 織物のソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。
B ペットのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。
C 部屋の湿度を50%、室温を20〜25℃に保つように努力する。
ペット(特にネコ)抗菌の減菌
@ できれば飼育を止める。
A 野外で飼い、寝室に入れない。
B ペットと、ペットの飼育環境を清潔に保つ。
C 床のカーペットをやめ、フローリングにする。
D 通気をよくし、掃除を励行する。
スギ花粉の回避
@ 花粉情報に注意する。
A 飛散の多い時の外出を控える。
B 飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。
C 飛散の多い時は外出時にマスク、メガネを使う。
D 表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。
E 帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
F 掃除を励行する。
 

LEAP診察室vol.21 掲載

急性中耳炎について

急性中耳炎について

Q.どんな病気?
A.鼓膜の内側にある中耳腔(くう)が急に炎症を起こす病気です。
鼻やのどとつながっている耳管を通して、ばい菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌など細菌やウイルス)が中耳に入り、炎症を起こします。耳管は開閉して鼓膜内部の空気圧を調整するなどの機能を持っています。しかし、乳幼児の場合、その機能が未熟なため、ばい菌が入りやすくなっています。
風邪をひいた後に発症することが多いのですが、それは鼻やのどの炎症を引き起こしたばい菌が中耳に入るためです。また副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などがあると風邪にもかかりやすく、中耳炎になる可能性も高くなります。
症状には、耳の詰まったような感じがする、耳が痛む、熱が出るなどがあります。炎症が進み、膿や粘液がたまって鼓膜が破れると耳だれが出始めます。言葉で伝えられない乳幼児の場合、機嫌が悪い、耳をよくさわる、高熱を発するなどのサインに注意してください。
Q.治療方法は?
A.軽度の場合は抗生剤と鎮痛剤で治療します。
強い痛みや高熱など、重症の場合は鼓膜を切開し、たまった膿をとり除きます。薬が効きにくい耐性菌も増えています。長引かせないためにも耳に痛みや違和感を覚えたら、なるべく早く診察を受けてください。
Q.注意することは?
A.風邪をひかないようにすることが一番の予防です。
例えば、鼻づまりなど風邪気味のときには悪化させないようプールに入らないなど、注意しましょう。風邪をひいたときは鼻の治療をしっかり行い、鼻の通り(鼻呼吸)をよくすることが大事です。
治療が不完全だったり、繰り返し炎症を起こしたりすると、中耳に液体がたまり難聴になる滲出性(しんしゅつせい)中耳炎や慢性中耳炎に移行することがあります。
≪中耳炎の主な種類と症状≫
●急性
耳の痛みや発熱など。乳幼児に多い。
●滲出性
発熱や痛み、耳鳴りなどの症状がなく、次第に難聴になる。
●慢性
耳だれが出る、難聴になる。耳の痛みはあまりない。耳だれにかなりの悪臭がある場合、周囲の骨を破壊する中耳真珠腫(ちゅうじしんじゅしゅ)のこともあるので注意。
≪中耳炎ウワサは本当?!≫
Q.「くせになる」と聞くけれど?
A.×
中耳炎自体が「くせになる」ことはありません。風邪をひくと発症しやすいため、風邪をひきやすい体質や保育施設など、人が集まるところで過ごすことの多い乳幼児がかかりやすいようです。
Q.耳に水が入るとなりやすい?
A.△
鼓膜の内側の炎症ですので、耳に水が入っても鼓膜に穴があいていなければ、中耳炎になることはありません。水で耳あかがふやけるなどが原因で外耳道に炎症が起こると外耳炎となります。
 
 

フェリア 2007年 掲載

口呼吸について

口呼吸について

Q. いつも口をポカンと開けているのが気掛かりです
3歳の息子は何かに夢中になると、いつも口がポカンと開いています。
寝ている時も口が開いていて、時々苦しそうな顔をします。口で呼吸をするのは体によくないと聞いたことがあるのですが、よくのどが腫れたり、風邪をひいたりするのはそのせいでしょうか?
A. 口呼吸になっている原因を確認・治療しましょう
本来、人は鼻で呼吸をするのが望ましいのですが、最近は鼻呼吸ができずに口で呼吸をする子どもが増え、しかも低年齢化の傾向があるように思います。鼻呼吸ができず、ミルクが飲めないと訴える乳児のお母さん増えてきました。
鼻は入ってくる空気の加温・加湿、異物の吸着・排出といった“空気清浄機”の働きがあるので、鼻を通った空気は適度に湿り、ほこりや花粉、ばい菌などが取り除かれます。ところが、こうした働きを持たない口で呼吸をすると、冷たく乾いた空気に触れて喉が乾燥し、ばい菌やウイルスなどがそのまま体内に入り込むため、風邪や中耳炎などの感染症にかかりやすくなります。さらに小さいころから口呼吸をしていると、歯並びや顔つきにも影響するので、早めの対処が必要。
口呼吸になる原因の一つにアレルギー性の鼻炎や慢性鼻炎が挙げられます。風邪から鼻炎が慢性化しやすいので、風邪の予防と適切な治療が大切。風邪のときにきちんと治療をして、鼻の通りをよくしておくと、鼻づまりの慢性化を防ぐことができますし、呼吸が楽になるのでぐっすり眠れ、風邪の治りも早くなります。
また、鼻の置くの方にあるリンパ組織のひとつ、アデノイド(咽頭扁桃)の肥大が原因になっていることも。アデノイドは乳児期以降大きくなり始め、3〜5歳でピークになり、その後は次第に小さくなるのですが、生理的にまたは炎症などによって肥大すると、鼻からの呼吸ができなくなります。睡眠時の呼吸障害になることもあります。成長とともに消失することが多いのですが、症状によっては手術が必要な場合もあるので、必ず専門医に相談を。
さまざまな弊害がかる子どもの呼吸。まずは耳鼻科を受診して原因を確かめ、適切な治療をしていきましょう。アレルギー性鼻炎がある子どもは口呼吸になりやすいので、特に注意が必要です。
 

リビング鹿児島 2008年 掲載